10月30日、日高管内の富川及び静内にて街頭演説を実施しました。今、最も話題となっているTPP交渉参加に関して、明確に反対を訴えました。多くの北海道民はその危険性、つまり参加することに関するデメリットをご理解しているものと思われますが、今一度道民が直接自分に降りかかる大きな問題だと言うことを分かっていただきたくて訴えをしました。以下その内容をご紹介します。

 TPPは2006年にシンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの4カ国で始めた経済協定。そこに米国、豪州、マレーシア、ベトナム、ペルーが加わり、ルール作りを行う作業を今後行われようとしているのが、環太平洋連携協定・TPPと言われるもの。「例外のない自由貿易」を基本としている。生産物の関税撤廃ばかりではなく、知的所有権や金融、投資、政府調達など24項目に及ぶ自由貿易圏域を作ろうという構想である。
 「TPPに乗り遅れたら、世界経済から取り残される」との声も聞こえる。また、韓国が米国やEUとFTAを締結したことから、輸出で韓国に差をつけられるとの考えもある。しかし、韓国が二国間のFTAを締結したのに、なぜ今日本が9カ国が組織するTPPに参加を検討しなければならないのか。二国間ならそれぞれの事情に合わせた除外項目の設定も可能であり、一対一の対等の交渉が可能である。ところが、米国が圧倒的なリーダーシップを取るTPPでは、それぞれの国の事情が反映されにくく、日本を含めた10カ国による多数決でルールが決められることになる。また、推進派の言う「日本は国際化の中で産業が成長した」ことは否定しない。しかし、みすみす不利益を被るであろう必然性のない枠組みで経済協定を結ぶ必要はないと私は考える。日中韓を中心としてアジア諸国との連携を強化することで、米国を牽制しながら二国間の経済連携を検討するべきだと考える。決して、農業を助けるために輸出産業を犠牲にするべきだとは思っていない。TPP加盟予定の9カ国の内、米豪新国以外はすでに日本とEPAを締結していることからも、TPPという枠組みにこだわる必要はないのだ。また、現在は輸出に関する関税以上に円高の影響が大きいとも言われている。
 TPP推進の野田民主党はマニフェストに則り農家の戸別所得補償制度を導入した。これは小規模農家を助けるもので、TPP参加をきっかけに農家を大規模化し国際競争力をつけるということと全くつじつまが合わない。また、その大規模化は20〜30haを想定しているが、米豪の規模はその10〜100倍の規模であり、到底太刀打ちできるものではない。さらに、民主党は食糧自給率を現在の40%から50%に引き上げると言っていたが、TPP参加の試算では14%にまで落ち込むことになっている。自給率拡大の問題をどのように解決するのかが全く示されていない。そして農業関連では7.9兆円の被害があり、連動して340万人の雇用が失われるとの試算もあるのだ。
 あるTV番組では「日本の米は美味しいので、安い外国米が輸入されても消費者は日本米を選ぶ」と述べていたが、カリフォルニア米の水準の高さを知らないのだろうか。消費者は直接購買しないとしても、外食産業はどうなるのか。一定水準の味が保てるのなら、安さでそれを選ぶのは自明の理である。食料を工業製品と同じレベルで考えることが、どれほど危険なことか。食料は軍事力にも匹敵する国民・国を維持する基本なのである。
 また、TPPは農業分野だけの問題ではない。政府調達は公共事業などで途上国への参入が見込めるが、これはゼネコンにのみ利益が見込めるもの。その引き替えに、小規模の公共事業に米国などの企業が参入することで、地方の中小企業に多大な影響を与えることが考えられる。さらに、医療や製薬分野にも新たな基準が設けられることで、安心・安全さえも脅かされるのだ。
 そして、TPPは概ね10年をかけて緩やかに解放を行っていくとされている。例え様々な不利益がもたらされたとしても時間と共に”慣らされる”ことで、その問題意識が薄れてしまう。そして問題解決を遅らせることになりはしないだろうか。大いに心配である。

 野田政権は今やTPP交渉参加に向けた地ならしを始めた。しかし、日本の将来に禍根を残すであろう重大な分岐となるTPP参加を阻止するために、道民、国民が力を合わせて反対を訴えて欲しい。