科学記者元村有希子氏のエッセイで、芸術文化への予算縮小に際して噺家のひとりが「食べないからって、頭としっぽがないんじゃタイの塩焼きもありがたみがない」と言ったことを例に、科学も「頭やしっぽ」を持っている。すぐに役に立つものばかりではなく、中には永遠に役に立たないものもあると述べている。
 むかし人を魅了する実験で知られた英国の著名科学者が、ある主婦から「役にも立たないつまらないことをして何になるの?」と聞かれ、「生まれたばかりの赤ん坊が、何の役に立つというのですか?」と答えたという。どんなものにも“遊び”の部分は必要だし、それが必然だと私は思っている。

 話は違うが、民主党政権の事業仕分けで科学分野がやり玉にあがったとき、研究者たちは自分の分野への支援復活ばかり叫んでいたという。意見をひとつにして集団で訴えることが重要だということに、TPPなどでの団体のまとまりの重要性を改めて見直したくなった。そしてこの様なときこそ団体の存在意義があるのだ。そう考えると軽種馬はいつもまとまりがない…困ったものだ。
藤沢すみお