時を同じくして、新聞二社が「民主主義」について言及していたが、その違いが興味深い。
 朝日は社説で「民主主義を考える」のタイトル。先の選挙で、有権者は支持よりも不支持で投票行動をとったという。さらに、まるで政治はサービス産業で有権者は顧客。不満なら業者(政党)を代えればいいという傾向にあるとしている。そして、期待に応えぬ政治を嘆き、救世主を待つのは不毛で、危うい。市民自ら課題に向き合い政治に働きかけるべきであり、投票するだけの有権者から、主催者となることが必要だと訴えている。
 一方、産経は哲学者の意見として、「民主的」と「封建的」との対比において啓蒙主義を基礎とする輸入の新思想が絶対的とみられ、民主的と対置されるものは否定されてきた。民主主義が絶対的な権威とされることで、社会に様々な問題があるのは民主化が足りないからという傾向に疑問を投げかけている。そして、裁判員制度や首相公選制、参院の廃止などは「民主化」の延長線上にあるというのだ。
 さらに戦前戦中、戦後の日本を蝕んできたのは外来思想を神格化したことにあり、この思想を意図的に利用する政治家がいて、改革派を名乗り、守旧派、抵抗勢力、官僚といった「悪」を設定してそれを駆逐するやりかたが見られるが、これは「改革幻想」だと主張している。
 
 
藤沢すみお