国を二分する議論となったTPPも、ホノルルAPECで野田首相の交渉参加表明でひとつの峠を越した観がある。もちろん私は絶対反対を主張しているが、ここで一度立ち止まって、広い見地でTPPについて眺めてみた。

推進派と反対派の双方の言い分を聞きながら、なぜ一致点を見いだせないのかと考えてみたが、結論として、それぞれが相手の立場に立って考えていないことがその要因だと思われる。

まず、推進派の言い分では、今自由貿易の流れに乗らなければ、日本だけが取り残される。アジア・太平洋圏の成長活力を取り込むにもTPP参加が不可欠だとされている。しかし、反対派の理由のひとつ、農業・食料自給問題解決に納得できる案を示していないのだ。農業改革は必要だとしても、それをどのように解決するのか、具体策が示されない中でJAバッシングを行ってもそれは八つ当たりにしかみえない。

次に、反対派の言い分は、農業への打撃や医療制度への参入で、食の確保・安全と命が危ういと主張している。しかし、低迷する日本経済を立て直すために、「何もしないで良いのか?」との問いに答えられていないのだ。

TPPは21項目に渡って関税撤廃が検討されるのだが、反対派による外国からの“攻撃”に関する不安論ばかりで、推進派によるメリットがほとんど示されていない。漠然とした「バスに乗り遅れるな論」がまかり通っている。例えば米国が要求するであろう医療制度への解放や保険・共済制度への参入などが問題視されているが、その逆は無いのだろうか。関税撤廃よりも円高是正が効果的だとの反対論もある中、ただ「クルマや電気製品の輸出が促進される」などの表現ではなく、非関税障壁撤廃で我が国にとって新たな市場が開かれるのか、具体的な可能性を示すべきだ。だから私は米国主導のTPPでなく、ASEAN+3や+6でも良いのではないかと主張しているのだ。

10月14日の朝日新聞によると直近の世論調査では、TPPの参加に対して賛成が46%、反対が28%となっている。反対論が十分に国民に理解されていないと反省しなければならない。但し、政府はTPPに関する説明が不十分とする回答が84%に上っていることからも、野田首相はTPP参加でどれだけの経済効果が発揮でき、その増益で農業政策への支援が行えるのか、より具体的な説明が不可欠である。